肉眼で見る映像と撮影された映像の違いは何でしょうか?一番大きな違いは、フレーム(枠)があることです。フレームの天地左右の比率をアスペクト比といいます。以前のテレビは4:3でしたが、現在地上波デジタル放送のテレビのアスペクト比は16:9です。YouTubeも16:9のアスペクト比となっています。
iPhoneのカメラの静止画のデフォルトは、4:3です。また、昔のブラウン管型テレビは4:3でした。4:3が多く採用される理由は、ピタゴラスの定理です。
a² + b² = c²
長方形の対角線の長さが公式で計算できるという定理です。
アスペクト比が4:3なら、対角線は5というピッタリサイズです。対角線でテレビのサイズを表現していたので便利なのです。55インチのテレビより60インチのテレビの方がちょっぴり大きいと数字で比較できます。
また、土地の面積測量を歩幅で行う場合も、とても便利な定理です。
一方、映画館で上映されている映画のアスペクト比は、ビスタサイズかシネマスコープです。テレビよりもワイドな画面なのです。だから、映画館ではコマーシャルの上映後、左右の黒い幕が少し開いてから映画本編がスタートします。では、映画がテレビで放送される場合はどうでしょう?通常は、16:9にトリミングして放送しています。また、作品によっては天地左右に黒い横帯をつけて放送することもあります。作品のオリジナリティを尊重したケースと言えるでしょう。
アスペクト比の参考知識として、黄金比と白銀比についても書いておきます。黄金比は1:1.618で、白銀比は1:1.414です。黄金比デザインの代表格は、名刺です。クレジットカードや銀行の預金通帳も黄金比です。一方、白銀比の代表例は、A4やB5などのコピー用紙、駅のポスター、まんが、雑誌、週刊誌、日本国パスポートがあります。黄金比と白銀比がよく使われる理由は以下です。
黄金比も白銀比も基本になるのは「正方形」です。黄金比に正方形をトリミングすると残りの縦の長方形も黄金比1:1.618です。
縦の長方形に同じように正方形でトリミングすると残った図形もまた黄金比になります。何度繰り返しても黄金比です。
一方、白銀比は、正方形の対角線をそのまま一辺に延長した図形。白銀比のすごいところは、半分にするとまた白銀比になるという点です。さらに、半分の半分にしても比率は、変わらず1:1.414のまま。
駅のポスターはB1サイズです。ワイド版ならB0。半分ならB2。さらに、B2の半分はB3ですべて白銀比です。A版、B版はすべて白銀比になっています。コピー機の倍率設定も、実は白銀比が表記されています。「A4サイズの1.41倍→A3サイズ」のように意外とすでに使っている比率です。コピー機で拡大や縮小できるのも白銀比のおかげですね。
【2024年9月9日追記】黄金比や白銀比について、デザインの基本として話題になることが多くなってきました。日本経済新聞2022年11月19日の記事を紹介します。「かわいい」比率、日本に宿る 欧米と美の好みに差あり 黄金比と白銀比、時空を超えて支持される理由。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE271740X21C22A0000000/